センター長あいさつ
はじめに
2025年4月1日に新潟県立リウマチセンターは、新潟県立新発田病院に統合され、県立新発田病院のリウマチセンターとなりました。私はリウマチ医療を統括するセンター長となります。
統合後も、建物は以前のままですし、診療する医師も変わりませんのでご安心ください。正式名称は、「新潟県立新発田病院リウマチセンター」ですが、皆様には、今後もリウマチセンターと呼んでいただければ幸いです。
まず、今回の統合について、ご説明させていただきます。
リウマチセンターの歴史
まずはリウマチセンターの歴史をご紹介します。1950年、村上市の瀬波温泉に温泉宿を改築し、新潟県立瀬波病院が開院、1962年には結核療養所として新築されましたが、結核治療が確立すると患者さんの数は激減し、廃院の危機にみまわれました。
そこで新潟大学の故・田島達也元整形外科教授が、温泉地に立つフィンランドのHeinolaリウマチ財団病院を視察し、多職種が連携してリウマチ医療を行う体制に感銘を受けられ、田島先生のご尽力により、1981年に瀬波病院はリウマチセンターとして再出発することになりました。
瀬波病院は当初は整形外科、リハビリテーション科の医師のみでしたが、1984年に、元新潟大学第二内科教授、故・荒川正昭先生のご高配で、第二内科の中野正明先生が派遣され、それ以降現在まで整形外科と内科が協力してリウマチ性疾患の診療にあたる体制を継続しています。
2006年には、県立新発田病院の新病院への移転に合わせ、独立した「県立リウマチセンター」として、新発田病院に併設されることになり、総合病院との携強化やアクセスの改善により、診療機能が更に充実しました。
院内のリウマチ部門をリウマチセンターと名のる施設は全国に多くありますが、独立した公立のリウマチセンターは当院だけでした。2019年には、長年のリウマチ医療への貢献、リウマチセンターを設立した功績を評価され、春の叙勲で、村澤 章名誉院長に、天皇陛下から瑞宝双光章が授与されました。
新規治療の効果とトータルマネジメント
リウマチ性疾患の治療には、生物学的製剤やJAK阻害薬が導入され、従来治療では救えなかった患者さんで画期的な効果を示しています。しかし薬物療法だけですべてが解決したわけではなく、骨折、腱の断裂や人工関節置換術などの手術、リハビリテーションを必要とする患者さんが大勢いらっしゃいます。
当院では内科リウマチ医と整形リウマチ医が協力して診療にあたり、さらに、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、診療放射線技師、臨床検査技師、医療ソーシャルワーカーなど多職種の専門職が一丸となってリウマチ性疾患に立ち向かう、いわゆるトータルマネジメントを行っております。これは新体制になりましても継続してまいります。
統合について
すでに報道されているように、少子高齢化、人口減少により、患者さんの数が減っていること、新型コロナ感染症が5類になり、国からの補助金がなくなったこと、コロナ禍が一応の収束をみたのに、患者さんの病院への受診が回復しなかったこと、光熱費や材料費は次々に値上げされているのに、病院の収入、すなわち診療報酬はむしろカットされていることなどから、県立病院全体の経営は非常に厳しくなり、現在のままでは、内部留保金、いわゆる財布の中のお金が枯渇するという危機を向かえました。
2006年の県立リウマチセンター開院時には、4階のリウマチ病棟(52床)、3階の回復期リハビリ病棟(48床)の2病棟体制でスタート、当時は回復期リハビリ病棟を持つ病院は少数でしたが、現在では多くの民間病院が回復期リハビリ病棟や地域包括ケア病棟を持つようになり、公立病院が回復期リハビリ病棟を持つ意義はもうないのではないかと言われるようになりました。また、隣接した二つの病院それぞれに、院長や事務長、看護部長などを置くのは非効率的であるとの指摘もありました。
そこで、2025年4月1日からは、県立リウマチセンターを県立新発田病院に統合し、3階の回復期リハビリ病棟は廃止、4階のリウマチ病棟と外来機能は、これまでどおり継続することが決定されました。
昨年9月にこの方針が公表されると、患者団体のリウマチ友の会さんが、日本で唯一の公的リウマチセンターの独立性を保とうと署名活動をしてくださり、県内から4000名以上、県外から3000名以上の署名が集まったと伺いました。当センターを評価してくださり、感謝しております。
何が変わるのでしょうか?
統合により何が変わるのかが、患者さんにとって一番心配なことだと思います。前にも書きましたが、受付の場所、診察の場所、医師は変わりませんのでご安心ください。ただ、入院の手続きだけは、今までの県立新発田病院でしていただくことになります。
今までも、当院の患者さんが合併症を併発したときは、県立新発田病院に紹介をしていましたが、別な病院であるために、受診の手続きや転院の手続きが煩雑でした。今後は一つの病院になりますので、これらの手続きが、よりスムーズになります。
また、以前の県立リウマチセンターは、出来高払いといって、使用した薬剤や行った検査によって医療費を請求するシステムでしたが、県立新発田病院に統合することにより、DPCといって、1日あたりの定額で医療費を計算するシステムに変更になります。
DPCでは、患者さんの在院日数が長くなると、病院経営には不利になりますが、リウマチ性疾患の患者さんは、特殊な疾患であることから、診療にあたっては専門の知識が必要で、しかも使用している薬剤が高額であるため、長期療養型病院への転院や、施設への入所が難しいという事情があります。入院期間が多少長くなっても、患者さんが、適切な病院や施設に移ることができるよう努力をしようと思っています。
おわりに
これまでのリウマチセンターの歴史と、2025年4月からの新体制について述べさせていただきました。リウマチセンターは独立した病院ではなくなりますが、多職種連携、トータルマネジメントによる、全国に誇れる高いレベルのリウマチ医療を継続していきたいと思っております。何卒よろしくお願いいたします。